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ああ、君が来たという事は「もう」 いや 「ついに」なのだね。

ん? なんというのかな、「あの時」から短かったとか長かったというよりも、今は「ああ、今日で終わりなんだ」という唐突な驚きに満ちているよ。勿論、たった一つの出来事で全てが変わってしまう事のモロさにもね。


「あの時」からの間で僕に起こった出来事なんてのは、君の事だから全て知っているんだろうから今更言葉にする気もないんだが、ただ最後に会った時に残した質問には答えなくっちゃならないね。「心変わりはあったか?」という質問に。


結論から言えば「変化はあった」だよ。ただ、一度も「あの時」を後悔した事もない。だから、今には何の不満も無いよ。まぁ、大満足もしてないけど、そもそも満足をしてたら「あの時」は生まれてないし、君とも会ってないという事だからね。


そうだな、あとは日々に忙殺されかけていたかな。それは裏を反せば生きる為の思考停止という手段ではあったという事で、同時に「あの時」があったから色々な事を考える余裕が出来たんだ。辛い時や楽しい時という波は「あの時」以前にもあったけど、常に頭の奥底で「質問」が暗い湖の底で鈍く光っているように存在して居たから、本当に己を忘れるなんて余裕はなかったんだ。


初めて全力で笑い、全力で泣いたり出来た。なんと素晴らしい事か!と恥じらいも無く思ったものさ。けど、それが段々と変わり始め、それによって自分を把握する事が出来た。僕は「あの時」から「質問」の変わりに「答え」が消えなくなっていた。そして、その答えには絶対的で否定できない説得力があり、絶望的な結論でありながら、僕を引き付ける魅力を完全に備えた物だった。


つまり、簡単に言えば、君との約束を違える気は一切ないんだ。だから、君は約束の事を何も気にせずガムシャラに、一切合財を引っ掻き回して構わない。僕はその破壊をただ素直に受け止めるつもりで、その覚悟も一応はしてきた。確かに突然の事で驚いてはいるけど、君がいつ訪れようとも構わないように身辺の整理をつけた状態を維持してたのは知っているだろう?


非情で傲慢な事なのはわかるし、他人がこんな考えで何かをしようものなら僕はそいつを力いっぱい殴り飛ばすけれども、僕はやはり世界や他者がどうこうよりも「自分」が関係している事にしか反応できないみたいだ。国も愛も関係なく、ただ単純に自分との関わりが最も重要な繋がりなんだ。それが後天的なのか先天的なのかはわからないけど、これはどうやっても薄める事も、まして消す事もできそうにない。


なので、僕は愛やなんたらという感情も感慨もなく君を受け入れ、そしてその結果までも受け入れる事にした。強いて言うなら、君は僕が「自分以外」で自発的に関係しようとした初めての例外にしたい。その果てに「存在」があるのかどうかはわからないし、全てが消えてしまうとしても、君と関係する事はやっぱり悪くないと思うんだ。


そんな訳で、待つ事に慣れてしまっている僕はいくらでも待てるけれども「飽き飽き」もしてるんだ。だから、君がそれでいいなら始めようじゃないか。さぁ、安寧を食いちぎる価値があるのかを、僕に教えて欲しいんだ。